【高付加価値と三現主義】企業が成長し続けるために必要なこと
第二次世界大戦の敗戦国であり、さらに自国資源が少ない日本が世界有数の先進国にまで成長した背景には製造業の強さがあった。
勤勉かつ真面目な日本人が作り出す製品は、日本品質として世界中に絶賛された。
しかし、IT技術の発展に伴い、IT後進国である日本の製造業は厳しい状態にある。
そんな日本の製造業が、今後も成長し続けるためには、『高付加価値』『三現主義』を徹底したモノづくりに励まなくてはならない。
高付加価値とは?
高付加価値とは自社独自の価値に等しい
付加価値とは以下のように言われています。
『付加価値=売価−原価』
つまり、製品を売ることでどれだけ利益を出せるかということです。
それと同時に、以下のように言われている記事もあるかと思います。
『付加価値=自社独自の価値』
これはどちらも正しいです。
製品を売ることで大きな利益を得るためには、
「より高い値段で売ること」
「より安い値段で作ること」
が必要です。
しかし、安い値段で作ることには限界があり、これは市場競争で勝つための根本的な要因にはなりません。
なぜなら、安く作ることは企業側の都合であり、顧客側には関係ないからです。
安く作ることで顧客側が価値を感じるとしたら、それは安く売ってくれた時です。
しかしこれでは企業側の利益は変わりません。
安く作ること自体は大切ではあるが、市場競争の有効打にはなりづらいということです。
また、製品の安さを競い合うことは、企業の体力を消費します。
安くなればなるほど、より安くすることが大変です。そして安くすることには限界があるため、長期的に見ると良い経営とは言えないでしょう。
では、どうすれば良いのか
それは高い値段で売ることです。
しかし、ただ高いだけでは当然顧客は買いません。
「高くても欲しい」と思わせること、
つまり競合他社とは違う特徴を作らなくてはなりません。
そしてその特徴が顧客ニーズと合致していなくてはなりません。
独自の技術やノウハウを活用して、
競合他社が模倣できない価値を製品に付与すること
が大切です。
付加価値を高めるためには何をすれば良いのか
付加価値を高めるためには、とにかく自社独自の製品を生み出す力を養わなくてはなりません。
そのためには、自社の強みの理解と活用が不可欠であり、下記のようなことを実行していかなくてはなりません。
- 自社の特許の把握と活用
- 顧客ニーズの調査と共有
- IT技術の活用
特許はまさに独自性の象徴です。
競合他社が活用できない技術であり、特許を活用した製品を生み出すことができれば、それは明らかに独自性の高い製品と言えるでしょう。
顧客ニーズを調査することは当然どの企業も実施しています。
重要なのは適切な共有を実施することです。経営戦略本部(仮)が顧客ニーズを収集したとしても、自社特許技術・ノウハウを把握している部門などに適切に共有できなくては独自性の高い製品の開発には繋がりません。
著しく成長しているIT技術をいかに経営に活かすかで、その企業の成長が決まります。
IT技術は、顧客ニーズの調査や分析、業務プロセスの安定化に貢献できる素晴らしい技術です。しかし、IT技術を活用し切れている企業は少ないのが現状です。まさに取り入れ、発展している現在、より早く、より有効に活用することができた企業が成長することでしょう。
三現主義とは?
「現場」で「現物」を見て「現実」を知ること
三現主義とは「現場」「現物」「現実」を重要視する考え方です。
会議室の中でどれほど熱意のある会議をしても、本当に必要なことを理解していなければ、良い経営方針には繋がりません。
特に製造業は、開発現場、製造現場を知らなければ意味がありません。
ボトムアップ(下から上がってくる)の情報だけでは、情報の欠落や緊急度の理解不足が必ずあります。
企業で働いていると、
「上は全然わかっていない」
「現場を知らない綺麗事ばかり」
という不満を聞くことも多いかと思います。
経営方針を決める人が、
・実際に「現場」に足を運び
・製造している「現物」を見て
・「現実」を知る
が重要なのです。
情報化社会だからこそ三現主義が大切
企業が成長するためには、現場力の強化やIT技術の活用が不可欠です。
しかし、これらは矛盾してしまう事態になりかねません。
IT技術が進歩すればするほど、情報の伝達はデジタル化します。
すると、管理職は現場に足を運ばずとも連絡を取り合える、情報を共有できるという状態になります。
しかし前述したように、現場を知らない経営は机上の空論になりかねません。
IT技術が進化し、情報化社会となっているからこそ、現場を知ることが重要なのです。
IT技術の進歩に伴い現場を知らなくなっているのは経営層だけではありません。
開発職も同じです。
CAD技術の導入により、機械や電気回路の設計者は、現物を見ずに机の上で設計できるようになりました。
その結果、サイズ、組み立て方法、加工方法などへの意識が薄くなり(意識してないわけでは無いでしょうが)、時には酷い品質の製品が出来上がります。
CAD技術の導入により設計の容易化が進む一方で、現場の設計力の低下に繋がってしまうわけです。
IT技術の進化で便利になっているからこそ、一度原点に立ち返って「現場で起こっていること」を正しく理解することが大切です。
高収益メーカーの共通点
下記の論文では、高収益企業であるキーエンスとファナックを分析し、評価している。
本論文によれば、高収益企業の共通点として以下のことがあるらしい。
- トップダウンにより「明確な利益目標」を掲げ、推進する経営管理体制になっている
- 「撤退への明確な基準」があり、素早い撤退ができている
- 優位性を構築するためのビジネス戦略を実現するための高い組織能力を築いてい る
ファナックにおいては、高い研究開発力とそれによる技術の優位性、原価企画能力、保守体制。
キーエンスにおいては、営業コンサルと迅速な新商品開発。
これらは、経営資源を、顧客対応、あるいは技術開発の中で特定の領域に集中させることで、他社が追随できない組織能力を作り上げている。